タクシー運転手 約束は海を越えて



学生ジェシク(リュ・ジュンヨル)の「Promise me」に記者ピーターが返す「(略)You are not alone」、光州のタクシー運転手テスル(ユ・ヘジン)を置いて帰る主人公キム・マンソプ(ソン・ガンホ)の口から出る「お役に立てなくて申し訳ない」、「レディ・プレイヤー1」を見た時にも思ったものだけど、こんなシンプルなセリフが真に迫って響くのが面白い映画である。


家の前でボール遊びをする子らを「よそでやれ」とうまくどかしていた主人公が、市民が虐げられている真実が隠されていることに居てもたってもおられず引き返す、あの辺りまでは普遍的な話だと思っていた。人がそれなりに満足して生きているのは、彼が序盤に体験するあの夜のような暗部が何者かによって隠されているから、いつだってどこでだってそうなのだと。でも彼が戻ってからの一幕で、これは紛れもなくあの時の話なのだ、今こそそれを語っているのだと分かった。


映画を見ていて、ある仕事の要素があらゆる人の中にあり得ると思うことがあるが(あるいはどんな仕事も方向性はあるがシームレスだとでも言おうか、運転手繋がりで「人生タクシー」を見た時に考えたことである)、この映画でもガンホの中に何度か「記者」を見た。ただし逆、すなわち記者の中にタクシー運転手の要素を感じることはない。この映画では運転手の方がいわば不可侵な職業なのだ。あんまり「タクシー運転手」映画なのでびっくりしたくらい(笑)