カプチーノはお熱いうちに



始まりは土砂降り。その中を幾つかの足がゆく。外に出たくなくとも出なきゃならない時がある、そういうことを思っていると、バス停に密集する足、足、足。カメラが物凄くゆっくりと目線を上げていくと、老若男女。ヒロインはまさに雨の日ならこうだろうという髪。ここで惹き込まれる。色んな人が色んな事を思うであろう、魅力的なオープニング。
その後、カフェで働く主人公エレナ(カシア・スムトゥニアク)をカメラが追ううち外が夜になっている。自宅にて男女の熱情を見せたあと、「下から」じゃないライトのもとで女達のちょっとした舞台が繰り広げられる。スクリーンの中はとてもめまぐるしい。


とにかくめまぐるしい中、ファヴィオ(フィリッポ・シッキターノ)が見つけてきたあの建物こそどっしりと、悠久の時を生きているかのように見える。アントニオ(フランチェスコ・アルカ)がエレナをそこへ連れてきて「13年」が経つ時、あそこではそれまで様々な人がそれぞれの時を過ごしてきたのだと想像する。
しかし映画が進むうち、「変わらない」ものはそれではなかった、海辺に脱ぎ捨てられたジーンズとジーンズの間にあったもの、ファヴィオがエレナを見る視線こそ「変わらない」ものだったと分かる。人生はあまりに短く、時には乱気流に巻き込まれるけど、永遠というのはほんのその時、その時に在るのだと思う。エンドクレジットが時の「間」を埋めていくのもいい。


尤も妻が病気になって初めてああいうふうになるなんて、うんこみたいというのもうんこに申し訳ない程度の夫だと思う(笑)まあそれはそういう人ってことだけども。
それにしても、エレナとアントニオの「愛の営み」の場面はどれも素晴らしい。「何」もせず終わる最初のから、「映画で見た世界で一番してみたいデート」一位に踊り出た海辺のあの体勢、「こんな汚い体なのに」って全然汚くねーだろ!という交わりまで。海はとにかく印象的で、終盤、13年前はバイクだったのが今は車かあ、と思っているところへあの展開だから嬉しかった。


エレナが作中着ていたワンピースは全てお買い上げしたい。ただしこの映画におけるワンピースは何というか「ハレ」っぽい衣装ではなく単に使い勝手がいいという感じで、そこが新鮮だった。