ジャージー・ボーイズ



ブロードウェイミュージカル「ジャージー・ボーイズ」を東急シアターオーブにて観賞。
初日初回の最前列のど真ん中!の席が取れて楽しかったけど、一番前というのも良し悪しだった。肉割れまで見えそうな(見えたわけではない)至近距離で役者さん達の表情や動きが分かる反面、舞台上の複数箇所を同時に捉えられない。両脇に出る字幕も首を相当動かさない限り見えなかった。


(私は映画版を劇場で二度、自宅で何度か見てるので、舞台もどうしてもそれと比べてしまった、以下そういう視点での感想)


バンド名を「The Four Seasons」としてからの快進撃の一曲目「Sherry」に至り、4人が始め舞台の奥の「カメラ」を見ながら、客席に半ば背を向けて歌っていたのが、途中からこちらへ向き直り、私達が「観客」になる、あの瞬間には興奮した。
ところが「Can't Take My Eyes off You」となると、映画のあの素晴らしい当該場面がどうしても脳裏に浮かぶため…あの場面はフランキーがバックバンド(切って落とされた向こうによる解放感!)と観客の間に居るから素晴らしいんだけど…「私」があの「観客」になるのは無理だとまず思ってしまった。でも映画よりも長く一曲を歌い終える頃には、違う意味での「観客」、単純に、目の前の歌手の観客になっていた。しかも数メートルの距離で、拍手すれば伝わるんだもの(ただ、それほど歌が上手いとは感じなかったけど)


映画化に際し、「床屋」「バス」など「映画」ならではの背景が取り入れられていることが分かり面白かった。あらすじの大きな違いである娘が亡くなるタイミングについては、舞台を見ると、事実はさておき、映画はそりゃああするよなあと思う。ちなみにこの違いにより、舞台には、雪の日にボブ・ゴーディオがフランキーをダイナーに訪ねる私の好きな場面が無いけど、似たようなシーンにおいて、腰掛けた二人の膝から下がいい形で重なっているのがよかった。
イーストウッドが?変更した点で印象的だったのは、「My Eyes Adored You」が妻との思い出についての曲から娘への思いを表す曲になっていたところ(映画では葬式後に流れるのを合わせれば都合二回、娘のために使われる)あの場で妻に向かって歌うのは確かに変だけど、映画の娘がらみの場面はどうも男のロマンが過ぎる感じで好きになれない(笑)


私としては、題材上なんだろうけど「女の子はおバカさん」的な描写が多いのが(昔の007シリーズで、仕事の話になると女の子のお尻を叩いて部屋を追い出すような、そういう描写のことね)少々見づらかった。映画の場合は時代設定を問わず、「大作」におけるそうしたミソジニー描写は減ってきているから。
舞台慣れしていない私にはよく分からないけど、舞台の特性のせいもあるのかなと考えた。例えばニックがトミーにキレて抜ける話し合いの場面など、映画とは違って舞台だと場内が笑いで一杯になる(私は幾ら「過去を振り返る」物語であってもあれには笑えない)。映画も舞台も色々なのは当たり前だけど、舞台ならではの特性…生身の人間が演じていることによる安心感からの単純化とでもいう特性があるんだろうか。あるいはその作品を選ぶ観客の特性かな。