プールサイド・デイズ


昨年の「カリテ・ファンタスティック! シネマ・コレクション」で見逃したものをようやく観賞。原題「The Way Way Back」の意味はタイトルが出る時に分かる。



映画はバックミラーに映るスティーヴ・カレルの顔の上半分に始まる。彼演じるトレントは主人公ダンカン(リアム・ジェームズ)を見張り、思い通りにしようとする。14歳なら友達と遊びに行かなければ、40を過ぎて踊りまくるのは「痛い」、なんて「ルール」を皆に押し付けながら、「食後に皿を片付ける」ようダンカンに言いつけておいて自分達はそのまま遊びに行くような、都合のいい奴。
その真逆の存在がサム・ロックウェル演じるオーウェンで、ダンカンと初めて言葉を交わす場面でのやりとりから、彼が「ルール」に囚われないことが分かる。「俺の親父がそうだったから嫌いなんだ」というのは、嘘かほんとか、多分嘘だろう(笑)


(カリコレ繋がりで、「ショート・ターム」でブリー・ラーソン演じるグレイス同様)ダンカンも自転車に乗る。「ここは最悪」だと身に染みた翌朝、車庫で「お姫様用」のピンクの自転車を見つけるカットの次に、ベン・クウェラーの「Out the Door」に乗せて道を駆けるカット。海の近くの別荘から、おそらく何キロも漕いで、まずちょっとした街に出る、その気持ちがよく分かる。きっと、ちょこっと人がいるところに行きたかったんでしょう?その後も夏が終わるまで、房こそ取るけど、女の子用の自転車に構わず乗り続ける。「近くに海があるのになぜプールに来る?」と言うオーウェンは彼を自転車ごと車に乗せて運ぶ。


宣伝文句には「『リトル・ミス・サンシャイン』のスタジオによる」「『ファミリー・ツリー』の脚本家による」などとあり、遊園地でのアルバイト繋がりで「アドベンチャーランドへようこそ」も脳裏に浮かぶけど、最後には結局「ダーティ・ダンシング」を思い出してしまった(幾度か書いてるけど映画好きになった切っ掛けの一本なので大体何を見ても思い出してしまう・笑)夏休みに知る違う世界、真夜中の従業員のパーティ、ダンス。あの映画で描かれている60年代に比べたら、今はもうずっと、好きなように生きられるんだよね、自分さえその気なら!それが嬉しくて、涙が出た。


ダンカンの父親はおそらく本当に彼のことが邪魔なのだろう。「昔」と比べて「親子」にしろ「夫婦」にしろ死ぬまで仲良く一緒なんていう「保証」が薄いからこそ、私達は自由になれる。「心にフタ」をしなければ。母親のパム(トニ・コレット)が「自分の道」を選ぶのは最後の最後だけど、作中「知りあってから最初のデートまで3カ月」というセリフがあったから、時間が掛かる人なんだよね(笑)


スティーヴ・カレルがこういう役やるの、考えたら珍しいのにちっとも違和感を覚えないのは、役者としての彼がすごいのか、あるいはもしかしたら最近、大好きなスティーヴ・クーガンと少々被ってきてるからかも(笑・クーガンはこんな役しょっちゅうだからね・笑)
出てれば嬉しいトニ・コレットとマヤ・ルドルフ、加えてアマンダ・ピートは全員おない年。ちょっと久々のアナソフィア・ロブもよかった、ああいう「普通」の女の子が出てくる映画って好き。どこがだよって言われそうだけど、昔のダイアン・ウィーストの役どころを思い出すような、大人の女性にもなっていた。