ジュピター



ウォシャウスキー姉弟による「SF大作」、楽しく見た。彼らの映画においては「世界」が「大きい」か「小さい」かは関係なく、その中で自分として生きていくことが大事なのだと思った。「皆が何をしているのかよく分からない」のが欠点だけど、私、宇宙での戦闘なんてもともと興味無いし!


「I'm an alien」というナレーションで始まるこの映画は、ミラ・クニス演じるジュピターがゆく!物語。大西洋の上で産まれた「国も家も持たない」彼女は、初めて恋したケイン(チャニング・テイタム)にそれと伝えるより先に「人生を変えたいけど、私は変わらない」と言ってのける。中盤「唯一の宝物」のために仲間を裏切った人物が「気持ちは分かる」とさっさと許されることからしても、映画の作り手が、ジュピターの「自分と宝物を大切にする」生き方を応援していることが分かる。
映画のラスト、傍からは「人生が変わった」ように見えないジュピターが、ピンクのゴム手袋をまくって「あれ」を見て満足げな顔をする。一つの体験と「新しい宝物」で人生が変わるなんて、素敵な話だ。


救い出されたジュピターがガラスめいたものを触って驚いている処にケインがやってきた時点で「これから素敵なシーンだ」と予感した自分、偉い(笑)そこからいわゆる「『スーパーマン』のテラスからのデート」が始まる。すぐ「まずい」ことになっちゃうけど、チャニングにくっつきタイムだからいいの(笑)シカゴを舞台にしたこの一幕はジュピターがケインにおぶわれて終わり、最後のアクションシーンもおぶわれて終わる。ただし、その後に二人は手を繋ぐ。
「アクション映画」におけるチャニング・テイタムとしては、あまりかっこよく撮られていないのが残念(最近よかったのは「ホワイトハウス・ダウン」、机の上をすーっと滑ってくる姿が忘れられない)「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のクリス・プラットなんて、それ程のことしてないのにかっこよかったもんね。大事なのはやっぱり、下半身の安定感だと思う。


ミラ・クニスというキャスティングもなかなかいい。「そんなんじゃ結婚できないぞ」なんて言われてる、金持ちに会いに行く女友達に「そういう男用のドレス」を勧める、「君には出来ない」と言われたことを躊躇なくやる女(躊躇ないどころか次の機会には…なんだから笑える)。何かというと吹っ飛んで宙でじたばたするのも超似合う。よく見ると不揃いな二重の瞳が、作中の衣装のアシンメトリーや少しずつ違う「異種」間の触れ合いにも通じるようで、そういう意味でもよかった。
最初の方で「ドアの開け方が分からない」と言ってるジュピターが、いつの間に読んだのか法律を身に付けてるなんて描写、好きだなあ。バレム王(エディ・レッドメイン)との場面で、彼女が「人命」を大切にしていることがわざとらしいほど伝わってくるのもよかった(笑)