死霊館



デコラティブな70年代ルックの似合うファーミガ様、犬、ゾンビーズ、そしてああ、犬が…楽しかった、燃えていながら抑制の効いて上品な、好きなタイプの映画。


オープニング、超常現象研究家のエドパトリック・ウィルソン)とロレイン(ヴェラ・ファーミガ)夫妻が「講義」する顔が点描(=「記事」の写真)になり、「これは二人が経験したものの中で最も恐ろしい事例である」「これは実際に起きた事件である」と文章がシメられてからのタイトルがかっこいい。エンディングも面白かった、単純なことなんだけど、「実話」もののエンドクレジットにこういう見せ方があるのかという。娘達の顔が隠れちゃうのが最高。
作中使われる既成曲も、どれも場面にぴったり。「二人のシーズン」ではしゃぐ娘達、「Sleep Walk」でほっと一息の母親(娘が夜中に歩き回るのと掛けてるんだな)、今調べたところによるとDead Man's Bonesというライアン・ゴズリングが歌ってるバンドの曲で、さあやったるぞ!の悪霊退治チーム。こういうシーン欲しいよね、というものばかり。


私がホラー映画を苦手な(「つまらない」と思ってしまう)理由は、「意味がよく分からないのに怖がらせようとしてくる(よって白けてしまう)」という偏見を持っているから。でも本作は「意味が分かる」し、「怖がらせようとしてこない」。怖い目に遭う人達を素晴らしい映像で見せてくれる。だから面白かった。
まず冒頭の「講義」で、悪霊ってこういうものだ(物体ではなく人間にとりつくものだ)と教えてくれるから、続く事例にそれをあてはめながら見ることが出来る。「二人の娘のうち片方ばかりに手を出すのは…」「殺すのが目的と言っておきながらもたもたしてるのは…」などと考えていると、また「講義」の場面が入り、悪霊ってそういうものだ(「弱い」者にまず侵入し、圧迫し、憑依するのだ)と教えてくれるから、やっぱりそうかと納得できる。終盤ファーミガ様が「分かった!」と口にしてくれるのにもすっきり(笑)こうした過程があるから、スウェット?姿の母親が地下の横穴に突っ込んでく姿なんかが面白いのだ。


冒頭、講義の後で学生に「お二人のことをどう呼べばいいか」と問われた夫婦は「『エドとロレイン』でいい」と答える。二人の愛し合っている様子、敬虔なカトリック信者にして科学的アプローチに生きる姿勢は見ていて楽しい。終盤、作中一番の垂直大移動…二階から地下室に落ちたロレインが、気が付くとすぐさま、手に持っていたオルゴールのねじを巻いて悪霊に向かう場面にはぐっときた。熱っぽいけど大仰じゃないのがいい。これはファーミガ様の個性や演技によるところも大きい。
「チーム」の残り二人は警察官のブラッドと、科学技術担当のドリュー。霊を信じない、鈍感なおっさん風のブラッドが霊にヤられるくだりはかなりの見せ場だし、ドリュー役のシャノン・クックという俳優さんはとてもキュート。彼を「発見」したのも大きな収穫かな(笑)