悪人に平穏なし



公開初日、ヒューマントラストシネマ渋谷にて観賞。


オープニング、「冴えない」のを絵に描いたような中年、いや老年に差しかかろうかという男が酒場で飲んだくれている。テレビのニュース番組(所々で挿入され伏線?になっている)に文句を付け、いちゃつく男女に恨めしそうな顔を向ける。
やがて車で(!と思うがそんなものか・笑)別の店へ移動した男は…この先は書かずに置く。予告編も未見、たまたま時間の合った本作を観て、ここで目が覚めたから(笑)「アクション映画」じゃないけど、アクションシーンはてきぱきしてて好み。


この映画の一番の特徴は、まるで単に「目撃」してるかのような「分からなさ」。作中何度か監視カメラの映像が使われるんだけど、特に前半は、それを色んな意味で拡大したかのような場面が続く。「情報」も少なければ、映画が主人公をどう描きたいかも感じ取れない。ラスト前の、主人公を捉えたある場面に流れる音楽に、本作の「姿勢」が表れてるんだけど、私には唐突に思われ、びっくりしてしまった。でも冒頭には嫌悪感さえ抱いた彼の顔が、終盤には美しく見える一瞬さえあったのが「予感」だったかもしれない。
それはともかく、観ながら「二時間ドラマみたいな話だな」という感想も抱いたほどの「事件もの」だから、「情報」が少なすぎるのは困る。これについては、例えば主人公の「ニュース」や「カップル」を憎んでいるかのような態度、身に付けている「十字架」や「結婚指輪」(他の男性も右手薬指にしてるから、スペインではそういう人が多いのかな?)、やたら銃をくるくる回す癖などをヒントに「余白」を勝手に埋めるしかない。


スペイン、マドリードの「感じ」が味わえるのが楽しい。東京よりは暗い夜の街、空地と電線の郊外。街と郊外じゃ違う虫の音。なんてことない店で、皆は何を飲み食いしているか。ショッピングセンターの中のシネコンがちらりと映るのも面白かった。