イースターラビットのキャンディ工場



都内で唯一字幕版を上映していたスバル座も吹替版に変更してしまってたので、どのみち吹替ならと最寄のバルト9にて観賞。日曜の夕方の回はみっちり満席。
日本版の予告編は、今年一番のサギじゃないかな?「キャンディ工場」が舞台のアニメと思わせといて、実際は半分以上が実写映像、舞台はほぼハリウッド。私としては却って良かった。


イースターの晩、サンタクロースよろしくお菓子を運ぶウサギを目撃した少年フレッドと、イースター王国の跡継ぎとして育てられたウサギのイービー。20年後、フレッド(ジェームズ・マースデン)は定職に就かないことを家族に責められ、家から追い出される。一方イービーはドラマーになる夢を捨てられず、「うさぎ穴」を使ってハリウッドにやってきた。
決められた未来から逃げようとする息子と、何もしなくてもいいから何をしていいか分からない息子。そんな二人の、いちおう大人同士の付き合いが描かれる。



とにもかくにも(予告編には一切出てこない)主役のジェームズ・マースデンがはまり役。「喋るウサギ」に驚いて台所に逃げ込み、手にするのが「フライパン」。そりゃあ子どもが見る映画だから包丁は無しだろうけど、これが似合う。「こんなつまらない仕事なんて」という物言いも、「TF3」のシャイアだと、ファンの私でさえいっぺん死んで来いと思うけど、マースデンだと腹が立たない。でもって思い付く「天職」が「イースターラビットになる」ことなんだから!今年の男の特訓映画といえば「X-MEN ファースト・ジェネレーション」だけど、私は断然こっち。彼の夢がかなうあまりに馬鹿馬鹿しいラストには、胸がじんとしてしまった。
ちなみにストーリーの柱の一つに、マースデンが豪邸の留守番をする(&勿論トラブルに巻き込まれる)というのがあり、アシュトン・カッチャーの「セレブな彼女の落とし方」を思い出した。留守番キャラってのがある。


予告編で強調されている「工場での反乱」を起こすのが、現場監督のおっさんひよこ・カルロス。アニメの動きが可愛く、手でむぎゅっとつぶしたくなる。実際の声はハンク・アザリアが担当してるそう。イースター国王の片腕として働いてきた彼は王子のイービーを追っ払い後釜に座ろうとするが、国王からは笑いとばされる。なぜひよこじゃダメなのか、というかなぜ工場の労働者層がうさぎじゃなくひよこなのか、よく分からない。
他の要素としては、イービー追跡のために出動する特殊部隊「ピンクベレー」。「女が強い」のにも逆に飽き飽きしてるから、彼女たちが大してマッチョじゃない、ごく「普通」なのが好ましかった。プレイボーイマンションのカメラをぶち壊しちゃうのもいい。


「ウサギが喋る」という問題が、主役のマースデンとの場面では「お約束」のドタバタの元となり、ダイナーのウエイトレスとの場面では、焦るマースデンを尻目に「当たり前」として受け入れられる、そういうレンジの広さが面白い。本人役で出演してるデヴィッド・ハッセルホフに至っては眉一つ動かさず、「オレの相棒なんて喋る車だぞ」と言ってのける。ちなみにその時、隣の席でぐずる女の子にせんべいなどあげながら大変そうだったお母さんの「なるほど〜!」という感嘆の声を聞いた(笑)