マイ・ブラザー



「戦争の行方は死者だけが知るって言うけど、ぼくは…」


壊されるだけ壊されて、生きて戻った人、その周囲の人はどうすりゃいいの?って話。


米軍大尉のサム(トビー・マグワイア)と、銀行強盗で服役中の弟トミー(ジェイク・ギレンホール)。サムのアフガニスタン出征と入れ替わりのように出所したトミーに、元海兵隊員の父(サム・シェパード)やサムの妻グレース(ナタリー・ポートマン)は嫌悪感も露わに接する。
そんな中届いた、サムの訃報。打ちひしがれるグレースと娘たちは、手を尽くしてくれるトミーと打ち解けあう。しかしサムは死んではいなかった。



夫婦二人と、子どもの演技が見もの。トビーの後ろ姿…首から肩、肩甲骨、肌の下にあふれる緊張感、最後に静かに流れる涙。ナタリーの、生活感あふれる「すごい美人」ぶり。
娘二人はもともと「イイ顔」なのが、どうやって演技つけてるんだろう?と思わせられるほど表情がすごい。父親に、使い古されたなぞなぞ聞かされてるときの顔には参った。
(長女役のベイリー・マディソンって「テラビシアにかける橋」(感想)の妹だった子か〜)


自分が「死ぬほど愛してる」相手のもとから離れている間、そばに誰かがおり、戻ってみたら「ティーンエイジャー同士」のような関係になってるなんて、そりゃあ穏やかじゃいられないだろう。加えてあんな体験をしてきた後なら、その心境は…しかし子どもたちにはそこまで想像できない。パパ好き、怖い、なんで?と移り変わる感情がありありと顔に表れる。それでいて、両親が「男と女」だという感覚がないんだろうなと思っていたら、あんな一撃を放つんだから、面白いものだ。


一度だけ触れ合った後の、サムの涙の意味が、考えてみたけど私にはよく分からなかった。一方遺書に手を伸ばすグレースの気持ちはよく分かった。


前半、一家のごたごたとアフガニスタンで捕虜となっているサムの状況とが交互に描かれるんだけど、後者が遠い場所での出来事…まるで「現実じゃない」かのように感じられたのには、少し怖くなった。