プリンセスと魔法のキス


新宿ピカデリーにて字幕版を観賞。


ニューオリンズに暮らす少女ティアナの夢は、自分のレストランを持つこと。ある夜、仮装パーティで出会ったカエルに、王子の姿に戻してくれるよう頼まれる。ところが呪いを解くはずのキスにより、彼女もカエルに変身してしまう。



「ディズニー初、アフリカ系で、王子様との結婚を夢見ないプリンセス」。内容を知らず「かえるの王様」の改作かな?と思ってたら、全く違っており、主人公ティアナと王子は作中7割ほどカエルの姿。後ろ脚で立つとすらりと人間風で、ティアナはほっそり、王子の方には王子様ならタイツの下に備えてる、なまめかしい筋肉がちゃんとある。「うまそうな脚だ」って言われてるし。


ディズニー映画のオープニングに流れる、シンデレラ城に花火があがる映像を見ると、どことなく不安な気持ちになる。煙をあげて橋を渡る列車は素敵だけど、お城の中にも、その奥に広がる町並みにも、誰もいないような感じがするから。
この映画では、この映像に次いで、シンデレラ城でも王様のでもないけど、とある豪邸が出てくる。ティアナの母親がメイドの仕事を終えて乗り込んだ路面電車は、お屋敷を出ると、高級住宅街を抜け、黒人ばかりが暮らす貧民地区に着く。ああ、あの映像のバックにあるのはこんな世界かもと初めて思い、胸がじんとした。


ジャズと女が大好きな王子は「働くのが嫌い」。私も働くのは嫌いだけど、いつか変わるかもしれないし、変わらないかもしれない。そういうふうに共感して観た。
終盤、船上で王子がティアナへのプロポーズに臨むシーンが楽しい。手作りの指輪にくるみの箱、カップの椅子。遊んでばかりの彼だけど、お金がなくてもカエルの姿でも、何だって用意できる。あんな豊かな食卓を作れる人って魅力的だ。二人なら、さぞかし素敵なレストランもできるだろう。
王子が「君に習った」ごちそうで彼女をもてなそうとするように、友達からの誘いも断り働きづめだったティアナも、彼の得意分野に踏み込んでいく。「ユーモアだってあるのよ」と胸を張り、「ダンスは苦手」とうなだれる。王子いわく「ダンスだってみじん切りと同じさ」。やがて、華麗に舞う彼女に目を見張ることになる。


とはいえ私は、ティアナのような女性は観ていて疲れるから苦手。ディズニーとしては新しい「お姫様」かもしれないけど、落語で若旦那としっかり者の女が所帯を持つってんじゃないんだから、ああいう男女の組み合わせには飽きた。それに、ティアナも「自分に必要なもの」が分かっていないというのは面白いけど、力を持つ年長者が若者を導くというパターンは不変なんだろうか?
お金持ちのパパを脅して贅沢三昧してる幼馴染のシャーロットの方がよほど好きだ。冒頭「かえるの王様」を読んでもらっている時のはしゃぎぶりからして可愛いし(長じてからも、ドレス含めた彼女の動きはとても楽しい)、仮装パーティーの夜、ダンスしながら「見て見て!」サインを送ってくるシーンも最高。ラスト、愛し合う二人の姿に涙を流して「真実の愛に憧れてたの」というセリフの意味を考えてしまった。


オープニングの星のきらめきが、いつもより何倍増しに見えたのは、後で思い返した時の錯覚かな?