母なる証明



ポン・ジュノの映画は大好き。今回も、その美しさには、近年ではアン・リーの「ラスト、コーション」を観たときと似たような衝撃を受けた。でも、美しすぎて、心が動かされるというより、少し乾いてしまった。隙が無くて、息吹が感じられないというか…


冒頭、トジュンを連れ去る車の運転手が一言「見事な走りだな〜」→あっ後ろ向いちゃってるよ→ドカン、というタイミング。焼け跡にたたずむ三人のショットの、ちょっとした短さ。ラストシーンの、車内で踊る人影を映す長さ。ああいう時間的なセンスがとても好きだ。
息子の罪を晴らすためにあちこち嗅ぎ回る母は、危険な目にも遭いそうになるが、カットが変わると、えっもうそんなとこまで逃げてるの?というシーンが何度かあり、可笑しかった。


私は「(着衣で普通に)おしっこをしている男性」が性的に好きなので、ウォンビンの立ち小便のシーンも良かった。でも「薬が入って、尿が出る」カットが、あまりにもきれいすぎて、ここでまず、心が冷めてしまった。


観終わって、ああいうふうに愛を注ぐ対象を持てるっていいなあと思った。結局のところ私は、愛を受ける側でしかない。母親になったところで、皆が皆、ああいうふうになれるわけでもない。


ところで、殺された子の携帯電話をあそこに隠したのは、本人だったか、おばあちゃんだったか?大事なポイントだと思うんだけど、観・聴き逃してしまって分からなかった。あの「量」(カツカツではない、有り余るほどの量)と、彼女が暗がりから言い返した言葉とを思うと、ぐっとくる。