南極料理人


観終わった直後、キリンジの「love is online」が頭を回った。違うといえば違うし、そうといえばそうだ(笑)


ペンギンはおろか、ウイルスさえいない最果ての地に建つ「南極ドームふじ基地」に料理人として赴任した西村淳のエッセイを、堺雅人主演で映画化。
フードスタイリストは「かもめ食堂」を手掛けたスタッフだそうで、予告編でも湯気のたつ美味しそうな食卓が強調されていた。でも「かもめ食堂」を観て心に残ったのが食べ物より片桐はいりのでかさだったように(感想)、今回も、美味しそう!とはあまり感じなかった。何が悪いというわけではなく、わがままなもので、「映画の食事シーンが好き」と言っても、どどーんと提供されるより、あれっ何食べてるのかな?という方がそそられるんだろう。



受けた印象は、「かもめ食堂」というより「刑務所の中」。知らない世界をのぞき見できる、しかも戦争ものや刑務所もののように「男の集団が世間と隔絶された所で暮らす」話なんだから、面白くならない方がおかしい。世の中、興味ぶかい題材がまだまだたくさんあるものだ。
また、年寄りばかりの場では死や病気がギャグになるように、あれだけの寒冷地では、寒いということがギャグになるんだなと思った。


観賞後、同行者が「(和・洋・中と)あんなに多彩な料理が食べられるなんて、日本人だからだよね」と言っていた。確かにそうだ。
日本的?といえば、傍観者タイプの語り手である主人公が、ある出来事から「主役」となるくだりや、最後の「いつもの朝ごはん」を長回しで捉えた風景など、日本のテレビドラマなどで見慣れたセンスだなあと思った。全篇楽しかったけど、ファンタジーとはいえ、抜けた歯に血がついてないのだけは許せないな…


年若い大学院生(高良健吾)は、1分735円という通話料金の電話をガールフレンドに掛けるが、結局振られてしまう。「結婚して家庭を持つ」ことが当たり前である社会が、こういう仕事を成り立たせている(それがベストというわけではなく、とりあえずそういうふうに落ち着いてる)んだなあと思わせられた。子どもや家があれば、女の側としても、少なくとも社会的には、関係を保たなければいけないもの。


堺雅人の、下だけもこもこの格好が可愛かった(あれは誰がやってもそれなりに、かな・笑)。最後は水着姿?も披露。豊原功輔のありがちなオヤジぶり(ぐしゃぐちゃ頭にステテコを履き、酒を嗜む、男にも女にも共感される「オヤジ」)も嫌味がなく、いい男だな〜と思った。