サンシャイン・クリーニング


登場人物の言動があまりに自然で(自然に見えて)、良かったなあとは思うものの、感想を述べようとすると言葉が出てこない。



姉のローズ(エイミー・アダムス)は、ハウスクリーニングの仕事をしながら息子を育てるシングルマザー。妹のノラ(エミリー・ブラント)は「学歴も仕事もなく」、商売下手の父親(アラン・アーキン)と同居。そんな二人が、ひょんなことから「事件現場」の清掃業を始めることになる。


同行者が観賞後「エイミー・アダムスって幸が薄い感じがする」と言ってたし、作中にも「私はデートや結婚の相手にはなれない」というセリフがあるけど(こういう言い方っていまいちピンとこないけど、それはそれとして)、私にはどの映画においても、よい意味で極めて「普通」っぽく見える。適当っぽい下着も、いかにもという感じ。ただしかつてのチア仲間の群れに入った際には、びっくりするほど輝いてたけど(他の皆のわざとらしいしょぼさは笑えるほど・笑/このシーンは、昨年の「やわらかい手」で、マリアンヌ・フェイスフルが隣の奥様方に自分の仕事を説明する場面を思い出させた)
それにしても、アメリカって、もしくはアメリカのああいう所って、ガチガチでめんどくさいものだ。だからこそ、言いたいことは言わなければやってられないのかもしれない。


とにかく素朴で繊細な映画。いいことが続いたり、悪いことが起こったり。だからこそ、息子の誕生日を祝った夜にママに遭遇するという「偶然」も、こういうことってあるかも、と思わせられる。そしてその後は、「天国に向かって」話しかける声への返答はなく、王子様が救いに来るわけでもなく、物語は一応の終わりを迎える。


姉妹がお手洗いで仲直りするシーンがいい。少しずつ感情をぶつけ合いながら、呆れちゃったり心安らいじゃったり、「まだ怒ってるのよ」なんて言ってみたり。一人っ子の私は単純に、兄弟姉妹がいるっていいなあと思ってしまった。


スティーヴ・ザーンが出てると知らなかったので、意外?な役柄を楽しんだ。ローズと彼の「掃除しかできない女だと思ってるの…?」の会話のテンポや、別れ際に車に乗り込む後ろ姿の映し方など、きめ細やかで心動かされた。
また、清掃用具店のオーナー・ウィンストン(クリフトン・コリンズ・Jr)の、片腕のたくましさには惚れぼれ…体に特徴のある男のセクシーさがよく出ていた。女扱いせず優しいという、嬉しく都合のいいキャラクターだ。
彼のお店をローズが再訪するシーンでは、涙がこぼれてしまった。誰かのちょっとしたあたたかさを感じる瞬間って、いいものだ。


人生には、正解もゴールもパラダイスもない。そう思う者にとっては、誰かが同じように思っていることがなぐさめとなる。そういうことを感じた。