ベティの小さな秘密


劇場で観逃したのをレンタル。


ベティの小さな秘密 [DVD]

ベティの小さな秘密 [DVD]


フランスの田舎町。10歳のベティは、元ピアニストのママと、精神病院の院長のパパ、「一番の友達」のお姉ちゃんと暮らしている。しかしお姉ちゃんは寄宿制の学校に入学、ママも家を出ようとしており、パパはいらいら。
パパに「嘘をつかれた」ベティは、病院から逃げた青年イヴォンを納屋にかくまうことで「小さな秘密」を持つ。



冒頭のベティの様子からは、どことなく「ちぐはぐ」な印象を受ける。周囲の皆を愛しているが、うまくいかない。後に自分で言うように「不器用」なのかもしれない。お姉ちゃんは居なくなってしまうし(お化け屋敷で、ベティを降り返りもせず逃げてしまうのがフランス映画ってかんじで良い・笑)、ママは町へ出かけてばかりだし、パパは忙しくて一緒にごはんが食べられない。それでも「大丈夫、何でもないわ」。自転車を漕ぐ足の速さに、彼女の心が表れているようだ。


ベティは、飼っているウサギや保健所行きを控えた犬などに対し、しきりに「私がついてるわ」と言う。病院から逃げ出してきたイヴァンに対してもだ。大人同士のやりとりなら、私がもしそんなこと言われたら、「守り欲」のために一緒にいるなんてやなこったと思ってしまうけど(と言いつつ結果的には守られてばかりだけど)、彼女を見ていると、単純に、生きる者・生に対する執着って、いいものだなと思わせられる。


ベティはイヴァンをかくまう納屋に「リビング」や「寝室」をこしらえ(このささやかなシーンが楽しい)、セーターを着せてあげたり、ものを食べさせてあげたりとあれこれ世話を焼く。それに応える彼は動物のようだ。
作中もう一人出てくる「男」は、新学期にやってきた転校生。顔にアザがある彼について、ベティは「クラスで話かけるのは私だけなの」と語るが、彼は彼女を騙し、皆の前で笑い物にする。彼にとっては、そうすることが皆の仲間になる唯一の手段だったのかもしれないし、看護師の息子として「院長の娘」に複雑な気持ちを抱いていたのかもしれない。しんみりするくだりだけど、同時に、体に障害がある(ベティはそう感じている)男が女を手玉に取るというのは、セクシャルな感じがして、どきどきさせられる。


イヴォンと犬のナッツを連れて森の中で一夜を明かした後、ベティは熱いコーヒーを用意する。チューブから入れたのは…練乳じゃなくてコーヒーフレッシュのようなものかな?美味しそうじゃないけど、陽の光の下で誰かと一緒なら、わるくない。


物語の結末は、(こういう話なら)もっと暗い方が好みだし物足りないけども…