ダウト〜あるカトリック学校で〜


TOHOシネマズシャンテにて観賞。とても面白かった。
60年代のニューヨーク・ブロンクスカトリック系の教会学校。保守的で厳格な校長のシスター・アロイシス(メリル・ストリープ)は、自由な雰囲気で人気を博すフリン神父(フィリップ・シーモア・ホフマン)が、転校してきたばかりの黒人少年と「不適切な関係」にあるのではないかと疑い、彼を追放しようと行動を起こす。



教会・学校内部と、シスターが足を伸ばすほんの近所が舞台だから、まず「閉じられた世界」の話として面白い。冒頭、説教の準備を手伝う男の子の姿も新鮮だし(女の子はやらないのかなと思ったけど、後に幾つかのシーンでああ、これは60年代の話なんだと気付かされる。今はどうなのかな?)、シスターたちの起き抜けや食事の様子なども、きれいな映像で撮られている。
校長と神父の板挟みになる新米教師のシスター・ジェイムズ(エイミー・アダムス)は、素直で快活で、見ていて気持ちのいい人物だけど、登校指導のときから(もっと言うなら登場時から)先生としてはダメそうで、案の定、授業もひどい。放課後、彼女の教室を訪れた校長との「きちんと生徒を管理できてるの?私の所に送られてくる子が少ないけど」「自分で何とかしようと思ってるんです」(中略)「『ボールペン』が落ちてるわ」「私は禁止してます」(このセリフで彼女の性格が分かる。頑張り屋だけど、物事を深くは考えないようだ)などというやりとりが「(学校の)お仕事」的に面白い。その後の「どの教皇だっていい」理由も可笑しい。


校長が神父を呼び付け、件の少年を受け持つジェイムズ含む3人が校長室で対峙するシーンはやはり見もの。女であるシスター(校長)がいくら頑張っても、神父より地位は下。もともと一触即発の状態だったのが、「疑惑」により爆発する。上座の自分の椅子に座られた彼女は、神父を追い詰め、席を取り戻す。
「悪者より知恵を働かせるのが自分の仕事」「神から離れても任務を遂行すべき」という考えの校長、お酒もたばこも大好きで生徒の色恋も応援するフリン神父、「子どもが大好き」なシスター・ジェイムズ、個性は三者三様で、学校には色んなオトナが必要だよなあ、と改めて思わされた。


メリル演じる校長は、登場時、黒い帽子で顔が見えない。でも彼女だと知ってるせいか否か?たたずまいだけで彼女、しかもどういう役柄の彼女なのか分かる。
彼女は厳格なだけでなく、年長のシスターが施設に送られないよう庇ったり、激昂するジェイムズが思わず肩の力を抜いてしまうようななだめ方をしたりと、面白味も備えた人間だ。ああいう人物に近付いて、自分へのある種の愛…執着を持たせられたら、性的に快感を得られるだろうなあと思った。そういう観方をしていると、彼女が何度か見せる惑いやラストシーンには、がっかりさせられる(笑)


フリン神父とシスター・ジェイムズ、校長とドナルド少年の母親、それぞれのやりとりから、この社会で「愛」と呼ばれるものは何なのだろうと考えた。当人同士の外に出たとき、それは問題となる。「哀れみから?」という校長の言葉も印象的だ。
ちなみに作中一番エロティックなのは、校内でドナルド少年が神父様を見つめる表情。それを受けてから部屋に入っていくフィリップ・シーモア・ホフマンのやり方も、デブなのに!憎らしいほどいやらしかった。