ワールド・オブ・ライズ


中東のテロ撲滅のために働くCIA工作員のフェリス(レオナルド・ディカプリオ)とベテラン上司のエドラッセル・クロウ)。現地を飛び回るフェリスはヨルダン情報部の協力を得て仕事を進めるが、エドが無断で行う裏工作により、何度も苦汁を嘗めさせられる。



「ヨルダン情報部の守備範囲は自国だけだが、俺たちは世界の平和を守ってる」とのたまうラッセル・クロウは椅子に座って指示するだけのエリートだが(かつては現地で肉体労働したこともあるんだろうか)、暮しぶりは庶民的だ。ぼってりついた脂肪はスーパーマーケットで売ってるようなお菓子が元だし、時間外勤務は子どもの送り迎えや授業参観と同時進行。あんな普通のおじさんが、ああいう仕事をしてる…というのを強調してるんだろうか。
そんな彼に苛立つレオのほうも、身なりなどには無頓着で、どこで買うんだろ?というようなセーターやジャージ、申し訳程度のスーツ姿。拷問を受ける際に暴れて見える腹や、ラストのジーンズ履いたお尻が、かろうじておっさん化してなかったので安心した(笑)
そんな「アメリカ男」二人に対し、ヨルダン情報部の長官ハニ(マーク・ストロング)は異様にぱりっとしており見ていて気持ちがいい。とくに登場時のハイネックの白シャツなど、着こなせる男性はそうそういないと思う。


CIAは無人偵察機を駆使して工作員を空から援助するが、テロリスト側はメッセージを「手渡し」し、車で砂煙を作るなどの原始的な方法で目くらましをする。結局は人間の働きがものを言う…というのは、近年だと実話だという「アメリカを売った男」(ちょっと時代が古いけど)なんかでも感じさせられたこと。冒頭(見上げればバレバレである)偵察機に文句を言っていたレオが、その監視から外れるラストシーンが面白かった。
加えて現地住民や観光客が巻き込まれる無差別テロのシーンは、映画でお馴染みとはいえ衝撃的だ。


観ていて面白いのはやはり、レオとラッセル、マーク・ストロング三者のやりとり。問題があると見ればすんなり現地にやって来るラッセルとハニの、互いに筋は通っているが噛み合わない会話、それを苦虫をつぶしたような顔で聞いているレオのシーンなど面白かった。
ヨルダンを追放されたレオが、本国に戻って(彼にしてみれば失敗の原因を作った…横槍を入れてきた)上司のラッセルと話をするシーンもいい。レオが「少しはダイエットしろよ、クソデブ」と椅子を蹴ると、それを受けてラッシー「10年前なら負けなかったぞ」。結局は同じ穴のムジナ同士、軽口を叩いているうちに心もほぐれ、「名案」が出てくる。「素」の顔をのぞかせてはしゃぐ、レオの表情が良かった。



「イエスかノーかで答えるんだ、でないと疑ってしまう」
  (「決して自分に嘘はつくな」を仕事付き合いの基本にしているハニ、フェリスを尋問する際に)