P.S.アイラヴユー


ポスターや予告編からしんみりした雰囲気かと思ってたら違っていた。宣伝文句にある「純愛」「涙」というよりは、チャーミングな映画。こういうの、やっぱり好きだな〜と思わせられた。


オープニング、外出先から喧嘩しながら戻ってくる二人。マンハッタンの小汚く魅力的な建物、エレベータはなく、階段を早足で昇る彼女と、着いてゆく彼。散らかり放題の部屋。言い争いは続き、靴が投げられ、彼は部屋を出てゆくが…
そしてオープニングタイトル。ここまでがまずとても楽しい。その後にいきなり葬式シーンというのもいい。
これは、愛する人を失ったことで、「結果的に」大切なものを得る物語だ。冒頭の言い争いの内容は、実はその根幹に関わっている。中盤、ある男に教える「女の秘密」がキーだ(笑)



ともかく部屋と衣装がすてきだった。あの出窓が羨ましい!
ヒラリー・スワンクって、おそらく仁王立ちに近い立ち方や、腕が前に来た猫背の姿勢などのせいで、後ろ姿やたたずまいが子どもっぽい。それがどの服にも合っていた。


ジェラルド・バトラーについては、こんな映画観たら誰でもこの人、好きになっちゃうよなあ、という時があるけど、まさにその通り。ガタイがよくて笑顔がキュート、男はこれに限る!
予告編では「死んだ夫から手紙が届く」ことが強調されていたので、死後は出てこないのかと思いきや、ヒラリーの妄想や回想の中に何度も現れる。10年前の出会いのシーンでは、二人共「中年俳優が学生服着てがんばってる」感が漂っていて可笑しかった(老けてたからというより、作中「若くして親の反対を押し切り一緒になった」というのが強調されていたため)。


でもってヒラリーの女友達がリサ・クドロージーナ・ガーション…今日のごはんは箸休めのおかずがないね、ってかんじ(笑)ヒラリーとジーナがバスルームで顔を突き合わせて会話するシーンはまさに「唇対決」だ。アイルランドのパブで男を眺める際、ヒラリーが隣のジーナに顔を寄せる仕草にもぐっときた。ボートのシーンはちょっとやりすぎかなと思ったけど…(ドイツ映画「ヤンババ!」を思い出した。老婆たちが死ぬ間際に銀行強盗する話。へんな邦題だけど結構面白かった)
ヒラリーの母親役のキャシー・ベイツは、なんてことない演技なんだけどやっぱりいい。それにしても彼女の外観は、ずいぶん前から変わらないように見える。


この映画では、「人間が性的な存在であること(性的な存在として求めあうこと)」が強調されている。
ランチを待つ間、ホリー(ヒラリー)に亡くなった夫の名前で呼ばれたダニエルは、「君に男として全て求められたい」と言うし、ジェリー(ジェラルド・バトラー)はホリーに宛てた最後の手紙に「ぼくは君と出会って『男』になった」と記す。このくだりでは、誰かと関わって相手が変わるということは、大いに人生の意義たりえるものだと思った。


男友達に「君は男を身体で評価してるから結婚できないんだ」と言われたリサ・クドローが、「私には権利があるわ」と理由を述べるシーンは、この映画の中ではシリアスで浮いたものに感じられた。女としての被害者意識もあるんだろうけど、冒頭の葬式での笑いどころが、急に辛気臭いものになってしまったというか。



「…私は独りぼっちだわ」
「そうね」
「たまには気休めでも言ってよ」
「ごめん」
 (略)
「…少し歩きましょうか」