さよなら。いつかわかること


シカゴのホームセンターで働くスタンレー(ジョン・キューザック)の妻は、軍曹としてイラクに赴任中。ある日その訃報が届くが、娘たちに伝えることができない彼は、家族で車に乗り込み旅に出る。


予告編など観て分かっていたものの、冒頭、職場のバックヤードをこちらに歩いてくるウエスト1メートルくらいありそうな中年男性がジョン・キューザックだとは、やはりぴんとこなかった。そもそも彼が「ボス」だなんて(笑)その後、部下を集めて行う「朝の儀式」が可笑しい(後半、車の中で娘たちと同じことを繰り返すシーンも可笑しい)。
それでも終盤、ドレスにスニーカー姿の女の子2人を両脇に連れた姿は結構はまっていた。作中、ベッドやベンチなどにおいて、娘たちが彼を挟んで寄り添うシーンが何度かあったけど、私は一人っ子だったので両親の間にいたから…ということもあり、面白く感じた。


妻の死を知ったスタンレーは、まず自宅の寝室の床で、次に訪れた実家のベッドで、くずおれて横になる。ベッドでは初めて嗚咽をもらす。その姿は若い頃のジョンを思い起こさせるけど、この映画の彼はあのままの彼ではない。「かつて得意としたキャラクターとは違うものを演じている」というより、時の経過により守り育てる相手ができ、変化したように感じてしまった。いずれにせよ、まるで素に見えるということだ。
旅の途中にスタンレーが実家を訪れると、母親はおらず弟がいる。32歳(私と同世代)で、今後は大学院に入り勉強するつもりだと言う。姪たちを夕食に連れて行った先ではサンデーのようなものをつついている。
弟は13歳の少女に「君とパパの意見は違うべきだ」などと啓蒙するタイプ、一方スタンレーは、弟が娘たちに母親の仕事について尋ねると、横から「ママは勇敢だ」と代弁してしまうタイプだ。そんな兄弟だが、真実を告げるよう勧められたスタンレーが「お前の意見なんて聞いてない!」と取り乱した後は、しっかりと抱き合う。ここでもかつてのジョンを思い出してしまった。



「お前の大統領はどうだ?」
「お前の、でもあるだろ」
「俺は投票してない」
「…誰にもな」
  (スタンレーとその弟、自国の対外政策について話しながら)


音楽はクリント・イーストウッドが担当。エンディングに流れるのは、きわめて普通の、普通の曲だ。そういうところが好きなのだとあらためて思った。