ラスト・ホリデイ


ラスト・ホリデイ [DVD]

ラスト・ホリデイ [DVD]


残り数週間の命と宣告された女性が、冥土のみやげとばかりに豪遊する話。いい人ばかりの登場人物に支えられて展開するお約束のストーリーに、最後にはほろっと涙ぐんでしまった。



スーパーの調理器具売り場で働くジョージアクイーン・ラティファ)は、服装も地味な倹約家。料理が得意だが、一人暮らしの家に食べに来るのは隣に住む男の子だけ。しかし彼女にも夢はたくさんあった。台所に隠された「あこがれノート」には、カロリーを気にして食べずにおいた料理や、片思い相手の同僚ショーン(LL・クール・J)、すてきなリゾート地などの写真が並んでいる。
ひょんなことから死期が近いことを知った彼女は、涙の後に開き直り、貯金をはたいてリゾート地へ向かう。スイートルームに泊まり、メニューの端から端まで料理を注文する彼女の姿に、周囲は相当の「大物」だろうと噂する。


人生最初で最後のリゾートとして彼女が選んだのは、チェコのカルロヴィ・ヴァリ。ホテルの内外、ちらっと映る街中などがとても美しい。


優しいジョージアに惚れていたショーンは、彼女が突然姿を消した理由を探り当て、家を訪ねる。そして「あこがれノート」の自分の写真(切り抜いて、ウエディングドレス姿のジョージアと並べて貼ってある)を見て彼女の気持ちに気付くんだけど…気持ちわるがられたらどうしようとドキドキしてしまった(笑)
この映画でのLL・クール・Jは、少女漫画の王子様的キャラクター。職場の女性にはお尻が高評価だ。肉体派の私としては、ジョージアに会うため、雪崩で閉ざされた道をがしがし歩く場面が印象に残った。ホテルに到着した際の、場にそぐわない雪まみれの格好も良かった。



ジョージア、鏡に向かって)
「あなた、けっこう幸せよ
 もし今度生まれ変わったら…(略)いろんな経験をするわ、勇気を持って」


主人公が鏡に向かって語りかける映画といえば、近年印象が強かったのは「トランスアメリカ」。性同一障害の自分が何を求めているか、何をすべきか、認めて生きるブリーは、毎朝鏡の中の自分に呼びかける。
ジョージアは、最後に自分が「ただの販売員」であることをばらされたとき、「今までの自分は下を向いて生きてたわ…そしてある日、ふと気付くの」と言う。彼女が顔を上げ、鏡の中の自分に語りかけたのは、きっとその日が初めてだったに違いない。


予想がついてたとはいえ、ラストシーンには、今年こういう場面で終わる映画を何本観ただろう?と感心してしまった。