小さな恋のものがたり



原題は「Little Manhattan」。オープニングタイトルは、10歳の男の子・ゲイブが、スティックボードに乗って僕の町=マンハッタンを飛ばす「アド街」的映像。空手教室の窓からあんな街角が見下ろせる子ども時代は羨ましい。



マンハッタンに暮らす10歳のゲイブ。パパとママは離婚話の最中で、冷蔵庫の食糧にもそれぞれ名札が付いている。
ある日、通い始めた空手教室で、彼のことを組み敷いたのが、同じクラスのローズマリー・テレスコ。女なんてキモチ悪い!と思っていたのに、日に日に彼女のことが気になり始める。


話はゲイブのモノローグで進む。こんなにも一人よがり、というか、主人公以外の心の内を伝えてこない映画は久々で、そこんとこがいかにも「ニューヨークの、10歳の男の子」というカンジで面白い。
作中、ゲイブはどこへ行くにもスティックボードで移動するんだけど、他にボードに乗っている子が映ることはない。そうポピュラーなもんじゃないのかな、と思いきや、デイブの属する「男の世界」の帰り道では、数人中一人を除いて全員ボードに乗っている。
ちなみにこの「男の世界」のシーン、ボードに乗っていない一人が小走りで仲間に付いてくるんだけど、これが「女の世界」なら、(ボードになんて乗らないだろう、というのはさておき)逆にボードの子達の方が、そうじゃない子に合わせるんじゃないかなあ、と思って可笑しかった。そういう気の遣い方の差が、大人になって溝の原因になったりするわけだ(笑)
ゲイブとローズマリーがボードに乗ってデートするくだりは、全然違うんだけど「デトロイト・ロック・シティ」でデトロイトに向かうシーンを思い出してしまった。それから、「小さな恋のメロディ」の時にも書いたけど、手ぶらでデートができるのっていいなあと思った。眉墨ひとつ持たずにだよ。まあ、私も慣れた相手なら、なくもないけど…(笑)


「この9ブロックの中は僕の町」とゲイブは言う。北はプラネタリウム、南は72丁目…外国に行ったことのない私には「ブロック」という感覚はよくわからないけど、私もかつては、いや、今だって、そういう区切り方してるとこある。その中だったら、タクシー乗ってもすぐ指示できる。そういうとこで暮らせるのって、幸せだなあと思った。