硫黄島からの手紙


イーストウッドの映画が好きだ。とくに、始まりと終わりが好き。今回、オープニングの、硫黄島のあちこちを捉えた映像を見て、頭に浮かんだのはなぜか「マディソン郡の橋」。静かだった。



冒頭、「こんな島、アメ公にくれてやれ」とぶつぶつ言いながら穴を掘る二宮くんは、汗もかいてないのに、何度も顔をぬぐう。なぜ拭っているのかわからない。たんなるクセなんだろうか。大体イーストウッドの映像は暗いから、意図されていない場合、快晴なのか曇りなのか、暑いんだか寒いんだか、よくわからない。


一つ許せなかったのは、二宮くんとペアのように行動する松崎悠希の、ゴハン(白飯)の食べ方。百歩譲って箸の使い方がヘタなのはともかく、なぜあんなに、ちびちび食べるんだろう。
このシーンに限らず、作中に出てくるゴハンはどれも不味そうで、そもそも戦時中に、あんなにたらふく食べられるわけがないから、リアルに感じられないし、二宮くんの回想シーンでも、盛り方がべちょっとしてて、赤紙の上にあれじゃあ、ますます食が進まなくなるだろう。裕木奈江の黒々とカールさせた睫毛も異様だ。
渡辺健と伊原剛志が酒を飲むシーンでは、「いただきます」直後に暗転してしまい、おかずが何なのか分からず、しごく残念だった。ちなみに、このシーン、上官には、あんなキレイなお皿が用意されていたんだろうか?でも、ともかく、イーストウッド映画に「ゴハン」が出てくるというのが可笑しかった。


ここ数年、ほとんどテレビ観てないから忘れてたけど、昔、伊原剛志が大好きだった。身体、大きいから。10年くらい前、ドラマ「オンリー・ユー」で鈴木京香の愛人やってたころがピーク。
私は戦争に関する知識があまりないので、今作での彼の格好は少女漫画の登場人物のように映った。馬に対して最後にかける言葉は、ああイーストウッドの映画だなあ、と思わされた。このシーンに限らず、淡々としていながら、そこかしこにイーストウッド自身を感じる、そんな映画だった。