シーズンチケット


シーズンチケット [DVD]

シーズンチケット [DVD]


ドリュー・バリモアが超可愛い「2番目のキス」(原題「Fever Pitch」)のラストに、スポーツのことをあまり知らない私は、球場に足を踏み入れることがそんなに大きな罪なのか〜と驚いたものだ。
野球とサッカーの違いはあれど、同じくシーズンチケットの出てくる「シーズンチケット」(2000年イギリス/監督マーク・ハーマン/原題「Purely Belter」)の冒頭は、球場の芝生を盗み出すサッカーファン二人の姿から始まる。



15歳のジェリーと17歳のスーエル。「2番目の〜」の「『教師の』ベン」も、部屋中を夥しいレッドソックス・グッズで埋め尽くしていたけど、ニューカッスル・ユナイテッドファンの二人の生活にも、貧しいながらサッカーグッズがあふれている。ジェリーが集めた記事の切り抜きや、スーエルが4年も着ているベンチコート
ジェリーの家庭は暴力をふるう父親から逃げ回る日々だし、スーエルは紅茶を水で淹れちゃうような、ボケた祖父との二人暮らし。合わせて1000ポンドのシーズンチケットのため、二人はちゃちな犯罪を繰り返し、お金をためる。
一日中歩き回った成果の「クズ」が一文にもならず、物々交換を迫られたとき、スーエルは青いハト時計を選ぶ。「だって、チームカラーだろ」


しかし、彼等は現実的だ。冒頭ジェリーは、シーズンチケットと共に獲得できるものは「敬意」だと言う。終盤、愛する女性との家庭を願うスーエルは「新たな夢がうまれて、サッカーへの興味が失せた」と言う。
二人は、練習中のアラン・シアラー(本人。って、知らないけど…)を捕まえ、皆がサインをねだる中、「チケットをくれ」と頼み、断られると、その辺のクルマを盗み、当のアランのものだと知って、置いてあるCDのダサさを笑う(ガブリエルやセリーヌ・ディオン!)。この、つかず離れずの感じが良い。


「参謀」のジェリーは、パッと見まだ小学生ほどの年齢に見える。実際ああいう子っている。色白で華奢な身体つき、若干腫れた神経質そうな上まぶたの目立つ顔は、たとえ何日もシャワーを浴びなくても、汚れないようにさえ感じられる。しかし口を開くと、しゃがれた声で、気の利いたことを言う。一方、真夏にも汗だくでベンチコートを着続けるスーエルは、でぶっちょでのろま、実際より年嵩に見える。その粘り強さを活かしたいたずらには笑わされる(最後に出てくる花壇)。犬のしつけもうまい。
二人だけじゃなく、周囲の人たちの顔もとても良い。毎日ウチでタバコ吸ってるだけのジェリーの母親(チャーリー・ハードウィック)は、病院に運ばれて「もう疲れた」とつぶやく。スーエルの愛する女性は、大人より大人っぽい化粧をし、15歳にして、フットボールの選手「ゴリラ」と婚約した。「まともな生活を手に入れたいから」。


「シーズンチケットのための貯金」は一年がかりの計画だから、作中では、ニューカッスルの春夏秋冬が見られます。クリスマスに流れるジョン・レノンの「Happy Christmas」が印象的。


(万引き先を考えながら歩く二人)

「1ポンドショップなんてのもあるぞ」
「面白いかもな、いくらで売れると思う」
「モノによるだろ」
「1ポンドショップで一番高いものはなんだ?一番安いものはなんだ?」
「一度に言われても…どっちを答えればいいんだ」
「いいか!1ポンドショップのものは、どれも1ポンドだ」