ブロークバック・マウンテン/愛の発露


アメリカ西部のブロークバック・マウンテンから始まった、二人のカウボーイの20年にわたる愛の物語。



役者の話からすると、私はジェイク・ギレンホールの顔がすごく苦手なんだけど、テンガロンハットをかぶったところはなかなか見ごたえがありました。ヒース・レジャーは、ぶーたれ風の口元に、わざとらしいほどの朴訥喋り演技がはまってた。
女優さんでは、ジャック(ジェイク)の妻を演じたアン・ハサウェイがとても良かったです。馬が大好きなお金持ちのお嬢様(ダイヤが並んだ蹄鉄型のペンダントをしているのが可愛かった)。ラスト近く、ジャックの死を知ったイニスと電話で話すときのマットな化粧顔の延々アップ、指についた赤いマニキュアの残骸が印象的。
イニス(ヒース)の妻役のミシェル・ウィリアムズは、私には、「キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ!」でのキルスティンとのコンビが思い出ぶかい。忘れられない顔だ。
(ちなみに彼女は「ゲイ映画に出演したとして出身高校から縁を切られた」(記事)らしい)
大好きなアンナ・ファリスが、お喋り女の役で出てたので笑ってしまった。


次いで食事の話。冒頭からあれこれ出てくるけれど、初めての(「食べ物」ではなく)「食べる」シーンは、イニスが撃ったエゾシカをさばいて焼いたものを、二人でがっつく場面。
ちなみに鹿を撃つはめになった理由は、食糧担当のイニスが熊に遭遇して荷物をなくしてしまったから。ジャックは「羊を一匹撃っちまおう」と提案するが、イニスは「オレは豆でガマンする」。二人の性格はまったく違うけれど、人懐こいジャックはイニスの気持ちをときほぐし、狩もさせれば、生い立ちも告白させる。
閑話休題。一番印象的だったのは、真夜中のダイナーでイニスが一人つつくアップルパイ。皿に残ったパイ底の生白い部分は、最後にとってあるのか、残しちゃうのか、ともかく、彼はものをあまり美味しそうに食べる人ではない。でもそこへやってきた女性、かつて彼を愛した女性は、自分のつまらなさを自覚している男に対し、「女は面白いから惚れるんじゃないのよ」と言う。


二人の最後の逢引、最後の朝の会話。
「お前のせいでこんなになってしまった、オレは負け犬だ」
「何があったか、知ったらそのときはお前を殺す」


この映画を観て、二人が一緒に暮らせればよかったのになあ、という感想をもつのは、傲慢とまでは言わなくとも、何かもやもやしたものを感じさせる。
人によって愛のありかたは違う。何が幸せか、何が可能か、他人には分からず、自分でもコントロールできない。生活を共にすることで、ときめきが失われたり、相手の嫌な部分が目についたり、それは万人が克服しなきゃならないことではない。個人の嗜好や、病気と呼ばれてしまう性質、環境、状況から、あるいは求めながらも何もできない、しない場合もあるし、求め合いながら別れる場合もある。イニスの人生も、これはこれで、彼の人生なんである。


(時間もないし上手く書けないので、続きは明日…)


(明日どころか数日たってしまった。原作本買ったので、読んだら続きを書くつもり…)