ラヴェンダーの咲く庭で



30年代、イギリスのコーンウォール。ジャネット(マギー・スミス)とアーシュラ(ジュディ・ディンチ)の年老いた姉妹は、海辺の家で二人きりの静かな生活を送っていた。
嵐の去ったある日、浜辺に一人の若者が打ち上げられる。彼の名はアンドレア、ポーランド人で英語は通じない。熱心に世話をするうち、姉妹の胸には、淡い恋心がわきあがってくる。



アンドレアを演じたダニエル・ブリュールは「グッバイ、レーニン!」の主役の人なのですが、この作品においては、とくにどうということのない見目麗しい青年…でもその「どうということの無」さがはまってる。若さの輝き、残酷さってそういうものだもんね。
とにかくやることなすこと無神経で、彼、実はバイオリンの名手なのですが、近所の自称「音楽家の端くれ」の医者(仲間とのバンドでコントラバスをひいている)が楽器を貸してくれる際、たどたどしい「模範演奏」を聴いたあと、同じ曲を弾いてみせる。お祭りの日にそのお医者さんにバイクで送ってもらうんだけど、揃って見送る姉妹を振り向きもしない。見てるほうがやきもきしちゃう。
しかし、だからこそ併せ持っている無邪気さも輝くというもので、地元の船の発着場…単なる海岸なんだけど…で「アメリカに行きたい」と言うも、地元の猟師たちに当然からかわれれば、すねて座り込む。姉妹の使用人である太ったおばさん(ソーサーなしでお茶を持ってくるような飾り気のないタイプ)を無邪気にからかってみたり。古風な水着姿も見られます。


映画に出てくる「美味しそうな食べ物」と同じく、「不味そうな食べ物」も印象的なものだけど(ちょっとなら食べてみたい、実際口にして「まずい!」と言ってみたい…)、ここに出てきた「魚のパイ」もスゴイ。なま白い皿いっぱいのパイ生地から、ぶっ刺されたイワシの頭や尻尾が突き出てるの。どんな食感なんだろう…