ローカル・ヒーロー


久々にお気に入り旧作映画の紹介。実家に置いてきたビデオを持って帰ってきました。1983年イギリス作品、監督ビル・フォーサイス
いま検索してみたら、いつの間にかDVDになってるらしい。

ローカル・ヒーロー 夢に生きた男 [DVD]

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(ビデオ版のジャケは、スーツのズボンの裾をまくりあげた主人公が、話のカナメとなる海辺の電話ボックスのそばを歩いているもの。こっちのほうが好きだなあ)
(さらに本国版のは、主人公と、彼が勤める会社の社長のバート・ランカスターが二人で海辺を歩いてるもの。下画像参照)



ヒューストンの大手石油会社が、コンビナート建設のため、スコットランドの漁村の買収を計画。さっそく社員のマッキンタイア(ピーター・リガート)が派遣されることに。天体観測マニアの社長(バート・ランカスター)は彼に彗星を見てくるよう声をかける。
マッキンタイアは支社のオルセンと交渉に向かうが、意外にも村人たちはすんなり話を受け入れる。


ようは「多忙な都会のビジネスマンが、田舎で真の人間の生活に触れて…」という話なのですが、全然説教くさくない。とくにビジネスマンの二人がエトランゼ的な体験をする前半は、夢の中のような雰囲気があって、何度見ても面白いです。そのうち二人とも、スーツを脱いで、セーターばかり着るようになって、ヒゲもそらなくなって、すっかり馴染んじゃうんだけど。最初のうちは、本社に「そっちはどうだい?」と電話をかけるも「君が行ってまだ2日だよ」などと言われ、「ずいぶん長く感じるな」と嘆いてるんだけど。
なにげないシーンのひとつひとつがすごく面白くって、たとえば、冒頭二人がクルマで村に向かう途中、霧に阻まれて一晩を道端で過ごし、翌朝目覚めたあと、外に出て足腰のばしたり…って説明しがたいけど、そういうのがいちいち心に残るんだよなあ。ちなみにこのシーンでは、ウサギがとても可愛いです。その後かわいそうなことになるんだけど(笑)
そうそう、相棒のオルセンは「日本語が話せる」ので、惚れた女(彼女の地味な美しさがいかにもイギリス映画らしくって良い)に海辺で日本語を教えるの。「タイヨウ」「サカナ」、これが「アシ」、そして「キス」…と、彼女の脚にキスをする。


役者全員の、とりわけ主役のピーター・リガートの無表情な演技も光ってます。その風貌はカッコよかったころのジェイムズ・スペイダーから輝きを取り去ったような…って見れば分かる(笑)実際この映画がアメリカで作られてたら、彼が主演でもおかしくない、でもって、冒頭の彼のビジネスマンぶり(ヤッピーぶり)は、もっといやらしく強調されてるに違いない。いや、ハリウッドならやっぱりマイケル・J・フォックスかな?だって「ドク・ハリウッド」ってこんなカンジの話だよね。

ドク・ハリウッド [DVD]

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最後、マッキンタイアはヒューストンの自分の住処に帰るのですが、いかにも中堅独身ビジネスマンらしいごちゃごちゃした部屋、窓からは、大都会ってほどでもないけどビルの明かりが見えて、私ならやっぱりこっちがいいけどなあ、なんて思ったりしてね。
詳しくは述べませんが、さらっとしたラストも、エンディングに流れる曲(音楽担当のダイアー・ストレイツによる)もよくって、観終るとああ、映画っていいなあ、と思わせられます。