氷壁の女


山の映画その3です。82年、監督フレッド・ジンネマン。こういう映画って好きだ。原題は「Five Days One Summer」。



1932年。初老の医師ダグラス(ショーン・コネリー)とうら若いケリー(ベッツィ・ブラントリー)はアルプスのふもとにあるロッジにやってきた。年の離れた夫婦は周囲から珍しがって見られるが、彼等はじつは叔父と姪であった。幼い頃から慕っていたダグラスとの旅行に胸はずませつつも、妻ある彼とのこれからを考え思い悩むケリー。
二人は現地ガイドのヨハン(ランベール・ウィルソン)と雪原に出かけ、40年前の結婚式前日に遭難したという男の死体を発見する。その後、心揺れるケリーはヨハンに自分達の関係を打ち明けた。彼女に惹かれているらしきヨハンは複雑な面持ち。
翌日、ダグラスとヨハンはケリーを残し、雪の「処女」峰に挑むが…


なんとなくアガサ・クリスティを思わせる映画です(ミステリーではないけど、本来の意味でのサスペンス…ではあるかも)。ダグラスが「インド帰りの医者」だったり(笑)ロッジに詮索好きの中年姉妹(自転車でよたよたと散策に出かける)や厳格な軍人風の男(ストップウォッチを持って山に登る)が泊まっていたり。
30年代の風俗描写も面白い。登山の格好も、セーターの上にツイードのジャケットとズボン、ぐるぐる巻きのロープを背負い、アイゼンを靴に留めるバンド?も素朴なもの。ロッジのダイニングや調理場(手回しの配膳器が面白い)、シャワーじゃなくついたての向こうでスポンジ使っての水浴び(寒そう!)などの様子も楽しい。
私からすると、二人とも登山経験があるとはいえ、男女の旅行であんな岩登ったりしなくても…と思ってしまうんだけど(笑)快晴のもとのアルプスが美しく撮られており、見ていて気持ちがいいです。


冒頭、夜行列車の中で、眠れずに彼のシガレットケースを取り出すケリー。車窓にもたれかかる様子は「わけありの女」といった風情。しかし翌日、毛布をかぶって駅のベンチで横になる姿や、彼に起こされて目覚める笑顔、輝く山の風景にはしゃぐ様子などは、まるで少女のよう。このアンバランスさに興味を惹かれ、どういう女性なのかな、と観ていると、ロッジでのシーンの合間に、二人のこれまでの経緯が挟み込まれます。
ビデオのジャケの説明では、二人の男が一人の女性をめぐって山に登る…という部分が強調されていたけど、三角関係の話というより、大自然の中で過ごす数日間での、一人の女性の心の移り変わりを描いた物語に思えました。



村のガイド、ランベール・ウィルソンがいかにも素朴で健康的な青年で(「冬は子供たちに読み書きを教えてるんだ」)、私なら一目で惚れてしまう(笑)
この人、今でもすごくカッコいいよね(画像参照)。公式サイトが可愛い。
そういや先日の日記のトーマス・クレッチマンとは、「ボンジョビと共演してる」つながりが…。でもトーマスとボンジョビの出た「U-571」では二人とも中盤で死んでしまうんで、どちらもあまり印象に残ってない…