アイガー・サンクション


山の映画その2は、クリント・イーストウッド監督・主演の「アイガー・サンクション」(75年)です。
(DVD出てたんだ。でもちょっとどうかというジャケ…)

登山好きの大学教授ヘムロック(イーストウッド)の裏の顔は、プロの殺し屋。仕事収めにCIAのドラゴンから「サンクション」(報復殺人)の依頼を受ける。
標的について分かっているのは、片足が不自由だということと、アイガー国際登山隊の一員だということだけ。ヘムロックは登山学校を営む旧友ベン(ジョージ・ケネディ)の許でトレーニングを積み、3人の男たちとアルプスの岩壁に挑む。


冒頭、講義を受ける女子大生が、登山姿のヘムロック先生の図入り教科書に「私にも登ってほしい」なんて落書きして、隣の子とにんまりし合ってる。イーストウッドがモテモテの美術教授ってのは、すごく違和感が…
前半は雰囲気が暗くって、ベッドシーンやら、ドラゴンが血入れ替えるシーンやらは、いかにもこの時代を感じさせる映像。
しかしそのおかげか、後半、イーストウッドジョージ・ケネディがグランドキャニオンの岩を征服するシーンなど、いっそう晴れ晴れと見え、美しいです。



クライマックスのアイガー登山はそれほど長丁場ではないのですが、イーストウッドが自分でやってるだけあって、やっぱりすごい。
さらに面白いのは、この北壁が、ふもとのホテル(有名なシャイデックホテル・画像)から望遠鏡で一望できるということ。晴れてる間は、ジムがはりついて4人の動きをチェックしている。
一転して、壁をはう男たちが映ると、思わせぶりな仕草でナイフを取り出す男や、イーストウッドの肩をつかむ男が…。ベタな演出に、結末分かっててもドキドキしちゃう。
結末もシブいんだよね。


ジョージ・ケネディといえば同時期の「サンダーボルト」('74/監督マイケル・チミノ/ASIN:B0002ZEXCO)も大好き。元銀行強盗のイーストウッドと、彼に心酔してくっついてくる流れ者のジェフ・ブリッジスイーストウッドの昔の仲間のジョージ・ケネディとジョフリー・ルイスが4人で組んで再び大仕事を…という話。準備期間の生活費のため皆で働くんだけど、ジョージ・ケネディとジョフリー・ルイスの仕事はミニカーでの移動アイスクリーム屋さん。クルマ倒れそう。
(しかしその後は、そんな可愛いエピソードから想像もつかないアメリカンニューシネマな展開に…)
ちなみに冒頭、イーストウッドは村の牧師として身を潜めているのですが、大学教授以上に似合わない。ジェフ・ブリッジスも一言「牧師には見えないねえ」。
イーストウッドジェフ・ブリッジスって、顔の醸し出す世界が違うというか、一緒に居ても全然溶け合ってない気がするんだけど、そういうとこも逆に面白い。