ヤングユー2月号


岩館真理子の読み切り「白き夜に青く輝く」、19年前の「街も星もきみも」のつづきだった。

(85年週マ掲載。右は当時の扉イラスト、「岩館真理子イラストレーションズ」(ASIN:408617233X)より)
「街も星もきみも」はマーガレットコミックス「わたしが人魚になった日」(初版1985年)に収録。現在では集英社文庫「自選集1 遠い星をかぞえて」(ASIN:4086172127)で読むことができます。最も「岩館真理子らしい」作品のひとつで、ファンサイトやってる者の独断でいうと、おそらく、ファンの間でいちばん愛されてる短編ではないかな。


どこともしれない雪ぶかい町。無愛想でいつもひとりぼっちの少女・カムは、廃墟に暮らす少年トオルと出会う。夜汽車で町を出ようとする二人。
今回の「白き〜」は、北国の町で、誰かを待つ猫と、誰かを待つ男が、一緒に暮らしている話。「街も〜」を知らなくても読み切りとして楽しめます。
2ページ目の駅のホームを見た瞬間、これはあの話だ…と思いました。
岩館真理子は83年ごろから(正確には「1月にはChristmas」から)担当者が変わって自由に描きたいものが描けるようになったのだそう。でもって「心おきなく自分の中と向き合って模索」した結果、やたら暗い話ばかりになってしまい、読者からは「どうしちゃったんですか?」という手紙をよく受け取っていたんだとか。
「街も〜」もそんな超シリアス期の一作。バッドエンドではないものの、二人の「幸せな」結末は描かれずに終わっています。


かつての岩館作品において、男というのは、少女の眼を通して見たものであり、心が通い合ったようでも、どこか得体がしれず、それゆえに独特の色気があったものですが、今はもう、平穏に、普通の視点で描かれており、セクシャルな要素はなくなってしまった。
今回の作品は、個人的に、実生活と偶然重なる部分があったのが嬉しかったです。


今回のヤングユーでは、東村アキコの読み切りも面白かった。ああいう、夢と現実を交差させて描くというのが、いかにも少女漫画らしい情緒で、好きだなあ。
14日には、先月まで連載してた「えびす銀座天国」の単行本が出るそうなので、買おうと思います。またああいう、トロい男性、描いてほしいな。