声をかけられる


聞いた方は「だからなに?」としか感想の持てない告白のひとつに、「私、よく道聞かれるんです」というのがあると思うんだけど、言わせてもらえば私はしょちゅう道を聞かれる。
といっても別の人間になったことはないので比べようがないんだけど、音楽聞いてても、精一杯急いで歩いてても、呼び止められるんだから、よく訊かれる方と判断していいだろう。道聞かれ顔選手権があったら、町内くらいは勝ち抜ける自信が。
ようするに地味で気がよさそうな顔ってことなんだろう。
(だからときどき、たとえばオノヨーコみたいな顔にあこがれる。道、訊かれなさそうじゃない?)


道を訊かれやすいってことは、たとえばそのへんでオバチャンなんかにも声かけられるわけで、たとえば台風の日に外に出てれば、駅のホームで、今日はすごいねえ、とか…
そうやって、外でちょこっと他人と接するの、決して嫌いじゃない、いいことだと思うし、実際自分も何でもそのへんの人に訊いてしまったりするんだけど、そういうの、当たり前だけど、所詮はオモテだけの気持ちいいやりとりだよね。
私は友達が少ないんだけど、もしかしたら、友達になろうと思えばいつでもなれる、という感覚が心の奥底にあるのかもしれない。ちゃんとしたつきあいは苦手なのに。そんな、男女の仲でもないのに、「すごい雨ですね〜」の一言から、それなりの友情がうまれることなんて、ないのに。